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2019年9月15日~23日
  視察先

ポートランド、シアトル、サンノゼ、サンフランシスコ

吉田ソース、ナイキ、スノーピーク、アマゾン、マイクロソフト、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、Zoom、ファーストレパブリックバンク、セールスフォース

随行コンサルタント:真貝大介、杉浦昇、小池彰誉、斉藤芳宜、松井桂、片山和也

ポートランド、シアトル、サンノゼ、サンフランシスコの視察ポイント

2019年の米国西海岸視察セミナーにおいては、『プラットフォーマーたちが創り上げた世界の先』を大きなテーマとして掲げ、
・見えてきた「独占の果て」に対するメガプラットフォーマーの「良き企業市民」化
・強いファン層を抱える老舗企業による、エンゲージメントの追求
・メガプラットフォーマーへの対抗軸の登場
・「ティール」を始めとした新たな組織運営モデルの定着
といった仮設を立てた上で、視察を実施しました。

これまでのグレートカンパニーツアーでは「日本の10年先をイメージする」
ことを大きな目的にしていましたが、既に西海岸のトレンドが3年で日本に伝播するのが標準的になりつつことから、事業意欲をかき立てられるような「ショック」だけではなく、「いますぐ取り入れられる」要素をふんだんに盛り込んだ視察となりました。

ツアーレポート

【DAY1】

2019年9月17日(火)

成田空港からシアトルへ

シアトル国際空港に到着

専用バスで視察に出発

 9月16日 月曜日、成田空港よりJAL便とANA便でシアトルに出発。
 シアトル到着後、サウスセンター(ワシントン州最大のショッピングセンター)での昼食を経由して、視察先1社目のアマゾン・ドット・コムに向かいました。

 

視察1社目:Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)

アマゾンのオフィスエントランス

同社AWSマネージャーより講演

ビジネスデベロップメントマネージャーより講演

(1)アマゾン・ドット・コムの概要
 アマゾンは売上25兆円。うち10%がAWS事業であるが、利益の60%はAWSによってもたらされている。
 毎年2.3兆円の投資を行っている、テクノロジー企業である。
 アマゾンは長い間赤字であったが、これは利益を全てテクノロジーへの投資に充ててきたことが理由である。

 

(2)AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)の概要
 同社AWSマネージャーより講演。AWSは当初、スタートアップ企業で多用されていた。
 その後、大企業に普及したが、中堅・中小企業マーケットは抜けている状態であった。
 現在は、中堅・中小企業マーケットを重視している。
 IoTにより、クラウド環境でスマートフォンからデータを集めることが容易になった。データを集めることにより予測ができる。
 例えばアマゾン自身も物流倉庫をIoT、AI化しており、よく買われる商品ほど前の棚に置いている。同時に人が動くのではなく、棚そのものを動かすことでリードタイムの最小化を図っている。

 

(3)アマゾンGOについて
 商品にタグはついていない。コンピュータビジョンにより商品が買われたかどうかを判別している。
 店舗の天井には膨大な数のカメラが設置されており、入店したお客の性別や年齢の概算も識別している。
 POSでは把握できない、購買プロセスを把握して、新ビジネスにつなげることが同店の目的である。リアルワールドでの情報収集。
 最初はアマゾン社員向けであったが、現在ではシアトルに5店舗展開している。

 

アマゾンGOの店舗外観

アマゾンGOの店内の様子

屋根に膨大なカメラ・センサーがある

 

(4)アレクサについて
 AI、IoTによるOPENプラットフォームである。
 日本でもロボットホームがアレクサを実装することにより、スマートホームを実現している。
 アメリカではアレクサを活用して、オフィスのIoT化、効率化を図っている。

 

(5)AWSの事例について
 過去10年間で70回もの値下げをしている。ソフトウェア会社の発想としては珍しい。アマゾンは小売りの発想なので、コスト削減はお客様に還元するという思想である。
 昨年1年間だけでも2000もの機能を追加している。165以上のサービスを展開。数百万ものユーザーが全世界にいる。
 回転すしのスシローは、AWSにより寿司ネタのタグ管理を行っている。その結果、15分後に売れるネタを予測して機会損失を無くしている。
 またアメリカではピザの自動販売機があるが、自動販売機内の部品の予防保全をIoTにより行っている。
 他にも灯油の宅配の最適化など(IoTにより灯油が減った家のみを回る)により、コストを大幅に下げている事例がある。
 近年では警察でも画像認識による犯罪捜査にも応用がされており、指名手配がかかっている人物の識別を、警察官が持っているカメラにより行える。

 

(6)アマゾンの組織文化について
 ビジネスデベロップメントマネージャーより講演。
 アマゾンの成長の原動力は、全てカスタマー・オブ・セッション(=顧客の視点)であり、カスタマー・フォーカスである。具体的に1)価格 2)選択肢 3)利便性 を重視している。
 さらにアマゾンが重視していることは ①カルチャー ②メカニズム ③アーキテクチャー ④組織 である。

 

①カルチャー
 リーダーシッププリンシパルには14の重要項目がある。
 最もリーダーシップで重視していることは「カスタマー・オブ・セッション」であり、次に「オーナーシップ」である。
 長期にわたる誤解を厭わないリーダーシップを評価している。例えば最初はキンドルも賛否両論のあるデバイスであるが、現在では成功をおさめている。
 ONE WAY DOOR なのか TWO WAY DOORなのか?前者はやりなおしがきかないから時間をかけて決めるべきだが、後者なのであれば、まずはやってみる。

 

②メカニズム
 メカニズムとは、プロセスをさらに完全にしたもの。完全なプロセス。
 誰がやっても変わらないレベルに仕組み化されたものを指す。
 例えば商品開発は下記ステップ(=ワーキング・バックヤード)で行う。
 プレスリリースを書く(商品はまだできてもいないが、それがどの様に評価されているのかを規定する)
 FAQを練る(想定される顧客からの質問を洗い出す)
 ビジュアルでお客様体験を詰める

 

③アーキテクチャー
 顧客が使いたいときに、それが用意されていること。
 例:AWSにおける165ものサービス。

 

④組織
 アマゾンが求めているのはビルダー(=実際に手を動かして完成させる人)。現場主義を重視。
 2ピザチーム(=2枚のピザでお腹がいっぱいになるレベルでの人数)で組織を構成して、適切な組織運営を行う。
 失敗を恐れない。例えば同社のスマホ Fireフォンは失敗に終わったが、その技術がアレクサに結び付いている。

 

視察2社目:Amazon Spheres(アマゾン スフィアズ)

アマゾン スフィアズの外観

アマゾン スフィアズ内部の様子

内部のカフェテリアの様子

 アマゾン スフィアズは、シアトル市内のアマゾン本社キャンパスの一部です。
 内部には750種類の植物が植えられており、目的はアマゾン従業員のワークスペースであり、ラウンジでもあります。
 夜は社員がいないため、植物に最適な熱帯雨林とおなじ環境を人工的につくりだしている。また、植物専門のスタッフ(研究員)も在籍している。
 基本的にアマゾン社員でないと入れない。毎月第二土曜日、第四土曜日は抽選により内部の見学が可能となっている。

 

視察3社目:パイク・プレイス・マーケット

 現存する全米のマーケットの中で最も古い、シアトルの台所といわれる市場が、シアトルのパイク・プレイス・マーケット です。
 スターバックスの1号店があり(上記写真)、観光名所となっています。

【DAY2】

2日目以降のレポートについては、本視察参加者のみへの公開とさせていただいております。

 総括

1.良い会社(=グレートカンパニー)の条件

経営者の仕事とは、
1) 儲かる仕事を見つけてくる
2) 社員が働きやすい環境をつくる
 この2つです。まず1)が先で次が2)です。
 従って、当然のことではありますが、まずは業績を上げるというのが必要なことです。

2.なぜ、あの会社は業績を急激(年率2~3割)に伸ばしているのか?

  今回視察した、アマゾン・マイクロソフト・Zoom・ファーストリパブリックバンク・セールスフォース
  これら各社は、毎年2~3割も業績を伸ばし続けています。
  では、こうした業績を急激に伸ばしている会社の共通点は何なのでしょうか?
  それは次の3つです。

  ①時流適応:クラウド/ミレニアル世代
  アマゾン・マイクロソフト・Zoom・セールスフォースについては、クラウドの波に乗った、ということです。
  クラウドは実はゲームチェンジ・ツールです。すなわち、従来自社でサーバーを立てていたものをクラウドに
  置き換えることで、ユーザーは大幅なコストダウンになります。こうしたクラウドに着目して、いち早く取り組んだ
  会社は業績を伸ばしているのです。
  またファーストリパブリックバンクの場合は、ミレニアル世代(2000年に成人する世代)を狙い、学資組み換え
  ローンに注力しました。これも時流適応です。

  ②儲かっている顧客と付き合う:ゲーム会社/多拠点展開企業/富裕層
  クラウドは従業員1万人を超える様な大手企業が導入すると、大幅なコストダウンになります。このクラスの会社になると
  情報システム部門で数十人以上の人員を抱えています。自社サーバーと比較すると、クラウドを導入することにより大幅な
  人員削減も可能になります。従って、クラウドに力を入れると、おのずと儲かっている大手企業が対象となります。
  また、アマゾンAWSの場合は、中小企業ながらサーバーを多用するゲーム会社を顧客としていました。
  Zoomも、多拠点展開をしている会社が主要ターゲットです。またファーストリパブリックバンクは富裕層の多いサンフランシスコ
  ベイエリア、LA、NY、ボストンに展開しています。

  ③やらないことを決める・強みに集中する
  マイクロソフトは、イノベーションのジレンマへの対応の唯一の手段は、自社の強みに集中して、やらないことを決める、ことだと
  明確に言っていました。また セールスフォースは、財務、人事(給与計算)はやらない、と決めているそうです。なぜならその分野
  をやると単なるツール屋になるからだそうです。あくまでお客様の顧客接点まわりで付加価値を出すのが同社の戦略です。

3.実は周辺産業が儲かる

  セールスフォースの本社ビル、セールスフォースタワーに、アクセンチュアも入居していました。
  セールスフォースは全世界の従業員が4万人だそうですが、セールスフォースの導入コンサルを行っているアクセンチュアでは
  全世界に従業員が40万人もいます。また同じく、同社の導入コンサルを行っているPwCも、全世界に15万人の従業員がいるそうです。
  ちなみに、セールスフォースよりもかなり歴史の長いSAPでも、全世界の従業員は8万4000人。アクセンチュアの約1/5の規模です。
  つまり、システムそのものを手掛けるベンダーよりも、そのシステムの導入を手掛けるエスアイアーの方が、市場として大きいことがよく
  わかります。

この記事を書いたコンサルタント

片山和也

工業高校・工業大学機械工学科を卒業後、大手専門商社の工作機械部門にてトップクラスの実績を上げる。船井総研入社後は一貫して生産財分野のコンサルティングに従事。部品加工業・セットメーカーに代表される中小工場・町工場向けコンサルティング、機械工具商社に代表される地域密着型販売店向けコンサルティングで成果を出し続ける。通算20年以上にわたり機械業界に携わっており、技術とマーケティングの両面を理解する超エキスパートとして、同分野で船井総研の第一人者である。

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