2018年1月23日~26日
  視察先

中国(上海、杭州)

テンセント、アリババ、滴滴、Mobike、スターバックス、船井上海総会、

随行コンサルタント:小平勝也、真貝大介、岡聡、三浦康志、中野好純、溝上智昭

中国(上海、杭州)の視察ポイント

日本人が知らない驚きのスピードで「進化し続けている」“最先端企業”を視察する4日間!
中国はわずか5年で日本の数倍速で成長を遂げたといわれています。
これまで中国の経済成長は、日本の高度経済成長に例えられてきましたが、一般生活へのITの浸透度・利便性においては、日本は中国に大きく遅れをとっています。
中国では電子決済が当たり前。これは都市部に限った話ではなく、街中見渡せばQRコードだらけで、皆スマーフォンを通して決済を行います。もはやスマホがないと身動きが取れない。それくらいにライフラインの一部となっています。日本が20世紀で止まっている間に、中国はITイノベーション大国へと変貌を遂げているのです。
また、テンセントやアリババといった巨大IT企業が1兆円規模で世界企業へのM&Aや投資を行うなど、世界を視野にめざましい成長を遂げています。さらに、世界の名だたる企業が見出し、世界一の店舗を出店しつつあるのが、ここ上海。都市インフラの整備されたこの都市には世界中から人や企業が集まり、グローバル化では完全に東京を引き離しています。
上海は今世界中からの注目が集まる巨大市場なのです。

ツアーレポート

【DAY1】

2018年1月23日(火)

視察企業1社目:週刊ダイヤモンド(講演)

 

1.中国アレルギーをなくそう 中国の経済力データ

・日本メディアによる中国パッシング報道で多くの日本人は中国の実態を把握できていない。
・2010年にGDPで日本を抜き、2016年には中国は日本の2倍以上のGDPになっている。
・2016年名目GDP:中国 112,067億ドル/日本  49,386億ドル
・2010年に日本は中国にGDPで抜かれている
・消費市場、製造業の実力、ネットショッピング浸透度等の指数においても中国が日本よりも勝っている
①消費市場≪世界の個人消費GDPに占めるシェア
中国  9.9% ・ 日本5.8% (2015年)
②製造業の実力≪世界の製造業GDPに占めるシェア
中国 15.0%  ・ 日本5.5% (2015年)
③EC市場規模
中国7,150億ドル・日本880億ドル(2016年)

 

2.中国の産業構造の転換

・「IT化の進展」「サービス化の進展」「ハイテク化の進展」
現在の中国の産業政策は、①高成長→中高成長に、②投資・輸出に依存した成長→消費に依存した成長に、③第二次産業主導の成長→第三次産業主導の成長に、④資源の大量消費→省エネに、⑤環境破壊→環境保護へと、変化している。


新旧中国経済比較

車もアリペイで変える

北京コンビニでの決済手段調査

①IT化の進展
この数年で中国はキャッシュレス化が非常に進んだ。コンビニ、シェアリングバイク、タクシー、 自動車もアリペイで購入できるようになっている。コンビニではアリペイ、ウィーチャットペイでの支払いが67%、現金は11%にまでなっている。

②サービス化の進展
・第3次産業が52%にまで構成比が増えてきている。
・北京では80.3%、上海では70.5%が第三次産業の構成比。

③ハイテク化の進展
・ホップ・ステップ・ジャンプで2049年「製造強国トップ」が国の方針
・自動車分野では電気自動車(EV)で世界覇権を握る野望「ゲームチェンジ」
・参入障壁の高かった軍事・航空分野にも参入している

 

3.まとめ

・旧態依然とした産業の高度化(自転車、タクシー等)、新規産業の進化、イノベーションの創出が同時多発的に起きている。
・世界の一線級の人材、巨額の投資資金を集められる中国が、これまでの先進国主体の産業発展を変えていく。
・中国から目を背けるわけにはいかない→中国とどうつながるか。中国とどう組むか。中国をどう利用するのか。日本独自の「勝ちパターン」を提示するときに来ている

 

視察企業2社目:モバイク(講演)

 

1.会社概要
・モバイクは2015年1月27日に創業し、今年で創業3年目となるスタートアップ企業
・都市の交通問題を解決することを目的に創業
・すでに1,000億円以上調達しており、登録ユーザーは2億人、1日の走行回数は3,000万回、200都市に進出している。
・中国ではすでにシェア自転車サービスで淘汰が始まっており、3社に絞り込まれている。モバイクの主要な競合企業としてofo(オーフォ)がある。

 

2)事業内容

①利用方法
以下の手順で利用することが可能
1.アプリで付近の自転車を検索して予約 ※WeChatペイもしくはアリペイの利用が必要
2.自転車についているQRコードをスキャンして利用開始
3.移動後、鍵の施錠をして利用終了。どこでも乗り捨て可

②レンタル自転車の開発


自転車の構造

街角のレンタル自転車

自転車位置情報のビックデータ化

③モバイクの価格と採算
タクシーやバスを比較対象として価格を設定している。中国のタクシーの初乗りは10元、バスは2元。自転車を移動の手段としてユーザーが検討する価格を検討した結果、バスの2元以下だと考えた。現在の利用料金は30分1元になっている。 ※1元=約16円
1台のレンタル自転車を回収するのにかかる原価は1元未満。講演ではコメントが無かったが、現在は資金調達を行ってサービス拡大を行い、拡大後に広告事業やビックデータ活用などによる収益化を行う可能性もあるのではないか。

④中国でレンタル自転車が伸びた理由
下記3点が中国で、モバイクをはじめとしたレンタル自転車サービスが伸びた理由
1)ハード(自転車)の製造能力
2)モバイルインターネットが浸透していた
3)人口密集している都市が複数あること。回転率が高く収益を上げやすい

モバイクは自社でレンタル自転車の開発を行っている。シェア自転車は、自身で保有している自転車と比べて、メンテナンスも無く、雑に扱われるため悪環境での使用にも耐えられる仕様にする必要がある。モバイクでは下記のような工夫をすることで耐久性や耐摩耗性を高め、4年間メンテナンスが不要である
・一般的には36本あるスポークを5本にした
・エアレスタイヤを採用等

 

3.レンタル自転車サービスが与えた影響

①中国の移動手段を変えた(自転車の利用率が5%から12%に向上)
モバイクをはじめとした企業がレンタル自転車サービスを展開したことで、レンタル自転車は利便性とコストパフォーマンスを評価されて利用者が急増。移動手段としてのシェアを数年で引き上げた。

②移動の利便性が向上した
モバイクと公共交通機関を活用すれば99%の箇所に行くことができる。

③経済を変えた
モバイクをはじめとしたレンタル自転車の登場で、地下鉄周辺の不動産価格に変化があった。地下鉄駅から15分離れた物件でも価格が落ちない。

④渋滞の緩和
北京では自動車から自転車の移動にシフトする人口が増えたことで渋滞が緩和されている。

⑤環境負荷の軽減
モバイクの総走行距離は182億km。この距離はガソリンに換算すると33.5億Lの削減。二酸化炭素排出に換算すると400万tの減少。植林に換算すると2億本に相当する。

 

【DAY2】

視察2日目以降のレポートは本視察参加者のみへの公開とさせていただいております。

視察4日間の様子はこちら>>

 総括

1.0⇒1はボトムアップ、1⇒0はトップダウン
・キャッシュ「レス」によって、賄賂・万引き・横領が無くなり、アリペイ&WeChat ペイによって、生産性の向上が図られた Cf)電子国家エストニアはペーパー「レス」で、国民の効率化をもたらした
・人口10億超の中国では〝10億もいれば′′、人口数百万人のエストニアでは〝人口が少ないから′′。日本は・・・
・滴滴もモバイクも0⇒1型はボトムアップによって生まれた。一方、1⇒0のキャッシュレス・ペーパーレス等、〇〇レスは既成概念の消失ソリューション。これまで既成概念を生み出してきた側の「トップダウン」が不可欠
・0⇒1は現場への権限委譲により起こり、1⇒0は現場の反対を押し切ることで実現できる。ただ、いずれにしても経営者の仕事は、びっくりアイデアを出すことではない

2.オポチュニティかクオリティか
・割り算の分母が大きい中国は、中華圏に本格浸透すれば10倍のコスト競争力。モバイクの1 日1 台1元のオペレーションコストは、まだまだ下がる?
・オポチュニティ型で勝負できないのは日本企業だけでなく、アメリカ企業も同様。Google も Amazon も中華圏マーケットが取り込めない
・一方、モバイク、滴滴のように、日本と異なったクオリティを備えたオポチュニティ型もあり、よりグローバル志向が高い(他にはDJI など)
・クオリティ企業は強いオポチュニティ企業を選び、選ばれる実力を磨くことが最高の生き残り戦略(スタバ×アリババ、フーマー×アリババ、ホールフーズ×アマゾン)

3.タッチポイントの「一番化」こそが、接触時間最大化・常時接続に繋がる
・グーグルの「検索」、アップルの「iPhone」、マイクロソフトの「OS」、アマゾンの「EC」、フェイスブックの「SNS」に対し、アリババ(EC が主力)もテンセント(メッセンジャーが主力)も「決済」の付加に成功
・「決済」に次いで好調なのが付加タッチポイントが「移動手段」。モバイク、ディディ、出前、、、グローバルの5強に対して、より「生存」「生活」欲求に密着した
・タッチポイントさえ最大化しておけば、後々収益化できる。最悪、広告収入はいつか得られる(グーグルもフェイスブックも既に最終手段に広告が収益のベース)
・クオリティ企業はタッチポイントの感覚が「近い」オポチュニティ企業と組み、その中で存在感を最大化させることが何より重要
・既存顧客とのタッチポイントを、もっと増やせる手段に注力することが何より重要。顧客ロイヤルティは財布のシェアから、タッチポイントのシェアへ
・タッチポイントが増え続けることで「コネクテッド」状態が実現される

4.現業が無くなることを「仮説」とする
・滴滴・快的の合流は、ウーバーへの脅威・危機感から生まれた ~エストニアも中国もある種の危機感からイノベーションを起こした
・10年前の士業でも「独占領域がいつか無くなる」仮説から、サービス業らしい経営にシフトが進んだ。これは元々香港やアメリカのトレンドを見た SATO グループ佐藤代表による提言があった
・海外視察の目的は「ヒント」と「危機感」。いまの自社のビジネス、商品が世の中から必要とされない、無くなってしまう「危機的ビジョン」を明確にイメージするから、再定義を始めよう(無くなるかどうかは結果論に過ぎない)

この記事を書いたコンサルタント

真貝大介

船井総研入社以来、徹底的な現場調査と具体的な業績アップ提案で、専門サービス業をはじめとした数々のクライアントを業績アップに導く。
士業マーケティングの本格化を機に、司法書士事務所へのコンサルティングを開始。
士業向けのコンサルティング部隊を10年で70名の部署に組織化し、全国で800事務所の研究会員が参加する「経営研究会」を法律事務所、会計事務所、司法書士事務所、社労士事務所、土地家屋調査士事務所向けに展開している。
近年は所員数100名を超える組織事務所のコンサルティングや、信用金庫をはじめとした金融機関向けコンサルティングを開始。

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