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2018年10月6日~10月14日
  視察先

ポートランド、サンフランシスコ・ベイエリア、ラスベガス

WIEDEN+KENNEDY、ナイキ、吉田ソース、セールスフォース、Google、SAP、スタンフォード大学、Zappos、シルクドソレイユ、ラスベガスサンズ

随行コンサルタント:出口恭平、小池彰誉、三浦康志、二杉明宏、竹内実門

ポートランド、サンフランシスコ・ベイエリア、ラスベガスの視察ポイント

日本の経営者に知ってもらいたい世界に変革をもたらし続けるグレートカンパニーから学び続ける1週間。
”Keep Portland Weird”のスローガン通り、風変りで独特なカルチャーが形成されるポートランド、ゴールドラッシュをきっかけに商業や公益の中心としても栄え多様な文化が形成されてきたサンフランシスコ、IT企業の集積地として米国発イノベーションの発信基地となってきたシリコンバレー、そして「カジノの街」から「総合エンターテイメント都市」へと生まれ変わり、世界中の人々を魅了し続けているラスベガスを拠点に視察を実施しました。
硬直化しつつある組織にイノベーションを起こすための「マインドセット」、顧客・従業員すべての関与者から愛されながら進化を続ける「組織づくり」のポイントなどについて学びました。

ツアーレポート

【DAY2】

2018年10月9日(火)

●日本法人現地派遣員より「シリコンバレーからイノベーションが起き続けるポイント」

1)シリコンバレーの「エコシステム」の特徴

①なぜシリコンバレーでは、イノベーションが起こり続けるのか?
シリコンバレーには、結果的に「イノベーションのために必要な要素」が、約80キロ圏内に全て揃っていると言える。

 

起業家精神に富んだ人材
・シリコンバレーには、世界中からいろんな人種が集まっている。白人の比率は40%、他はアジア・インド・東欧等。様々な国・文化がまざりあう環境であり、全員に当てはまる常識はない。こうした環境も、イノベーションを後押ししている要因であると言える。
・例えば私は日系金融機関の法人営業部所属だが、法人営業部の皆で考えてでてくるアイディアはたかが知れている。ただ、このディスカッションに人事部、システム部を入れたらどうだろうか?新しい発想は生まれないだろうか?

 

起業家を支援するエンジェル投資家
・お金はない。でも技術・スキルは持っている。そうした起業家に対して投資をするような、エンジェル投資家が多いこともシリコンバレーの特徴である。こうした投資家の存在が起業家を惹きつけ、そして優秀な起業家を目指して投資家が集まるという好循環が生まれている。

 

ベンチャーキャピタル
・ビジネスモデルがまだスケールしていない種の状態から投資をするベンチャーキャピタルが数多く存在する。特にYコンビネーターが有名である。
・彼らはもちろんビジネスモデルを評価して投資の意思決定をするが、シリコンバレーでは時には「この起業家なら何かを成し遂げそうだ」というように、経営者の人物像に対する信用・信頼で投資がなされる側面も多い。

 

起業家の成長を支援するコーチの存在
・Yコンビネーターは、起業家を支援するカリキュラムを提供しているが、そのような仕組がシリコンバレーには数多く存在している。なお、YコンビネーターのHPやブログをみると、直近3か月間でどこの企業がコーチを受けたのかを確認することができるが、「コーチを受けた企業=スケールする可能性が高い企業」として、一般的に認知されている。(投資家達の投資意思決定の判断材料にもなっている)

 

②必要な要素が全てここにある
・先述したように、シリコンバレーには、イノベーションを起こすために必要な要素が凝縮されている。起業精神に富んだ人材が集まり、且つそこに資金・ノウハウ面で援助を行う機関が加わるからこそ、イノベーションが起こり続けているのだ。

 

2)デザインシンキング
①イノベーションを起こす「フレームワーク」の存在
・シリコンバレーにはイノベーションを起こすための重要な要素が集まっているが、加えてアメリカでは主流となっている「デザインシンキング」の考え方が浸透していることも、イノベーションの実現を後押ししている要因と言えるだろう。特にSAPがデザインシンキングを取り入れつつ、シリコンバレーで新規事業展開に注力し、成功を収めている点は有名だ。

 

②ユーザーが抱える「課題」と向き合うことが大切
・「ユーザー課題を正しく理解する」⇒「現状の問題を洗い出す」⇒「問題解決のためのプロトタイプを作る」⇒「それをリリース、リアクションをみながら即ブラッシュアップする」というプロセスが、基本的な流れである。
・日本人は「良いものを作れば売れる」というプロダクトアウト発想や、「完璧に仕上がってからリリースする」という発想が強い側面があるが、こうした思考方法だと、作り手の思考の枠を超えた発想が生まれにくくなったり、PDCAサイクルを展開するまでに時間がかかりすぎてしまうといったデメリットがある。
・そうしたデメリットを防ぎ、スピード感をもってイノベーションにチャレンジできる思考方法が、デザインシンキングであると言える。

 

●働き甲斐の先を目指すイノベーティブ企業「セールスフォース」講演

1)会社概要
・セールフォースはカリフォルニア州に本社を置く、顧客関係管理(CRM)ソリューションを中心としたクラウドコンピュフォース・ドットコムは、米国カリフォルニーティング
・サービスの提供企業である。ビジネスアプリケーションおよびクラウドプラットフォームをインターネット経由で提供している。
・1999年3月に、マーク・ベニオフにより設立された。翌2000年4月には、日本法人である株式会社セールスフォース・ドットコムが設立されている。
・セールスフォース・ドットコムは、前オラクル幹部のマーク・ベニオフ(英語版)により、業務アプリケーションをウェブサービスとして提供するというコンセプトのもと、1999年3月8日に設立された。SaaSタイプの本格的なクラウドコンピューティング・サービスの提供企業としては最初とされる。

 

2)働きがいのある会社世界No.1で大事にされていること
①96%が仕事に満足するという異常性
15%と96%の差

・Salesforceでは常に文化の壁を破る工夫をしてきたし、その結果得られた従業員満足度の高さそのものを誇りにしている。というのも、とある統計によると世界の全従業員のうちわずか15%しか仕事に満足している人がいないとされている。85%もの人が一日が終わるのを待ちながら仕事をしているのだ。一方でSalesForceでは満足している社員の割合が96%という驚異的な結果が出ています。これは異常な結果とも言えよう。

 

②Salesforceが大切にしていること
・仕事は同じでも従業員が仕事の目的意識を持って取り組めているか、会社に帰属することの誇りを持っているか否かでパフォーマンスは大きく変わる。だからこそSalesforceはこの従業員満足度に誇りを持っているし、この指標は大切なことだと思っている。Salesforceのカルチャーは「ohana(ハワイ語で家族)」という言葉に象徴される。家族として接することによって、経済的にも成長することができる。言い換えると「日常生活と同じ行動様式」から外れてしまうと、「嫌いな仕事」になってしまう。日常生活と同じ行動で仕事ができることが「家族的」で「快適」な仕事になる。
・たとえば毎年行われる評価、Emailや会議の連続は日常生活には登場しない。だからこそ、これらが好きな人はいない。すべての動きが日常生活と同じレベルの快適性がないとモチベーションが下がる。たとえば評価とフィードバックは随時行われるべきですし、情報共有はチャットなどによって気軽に行われるべきなのです。

 

③従業員満足度向上のための具体的施策
使いやすいDigital Workspace
・仕事に使うシステムがわかりやすく、使いやすいこと。これこそが従業員満足度の最初である。特に仕事の始まりとなる社内ポータルは難解なイントラサイトではなく、普段のスマートフォント同じくらいの簡易性、利便性が必要。

 

V2MOM


・すべての従業員が会社と同じ方向に船を漕ぐために、会社としてV2MOMという手法を導入している。V2MOMとはVision(ビジョン)、Value(何が重要なのか)、Methods(どうやって価値を提供するのか)、Obstacle(その価値を達成するためどんな課題があるのか)、Measures(基準)の5つの項目であり、会社としてのV2MOMを組織、ひいては個人レベルまで自分なりのV2MOMとして落とし込んでいくことで、会社の進む方向と個人の進む方向を合致させ、モチベーションを高めている。
・また、このV2MOMとそれの達成状況については、全社員が全社員のものをリアルタイムで閲覧可能である。これについては過激な透明化とすら呼ばれているがFacebookやLinkedinといったSNSの登場によるリアルタイムでの他者の把握文化に対応したものである。つまり、ソーシャルメディアの登場により、これまでよりも爆発的に早く個人がどのような行動をしているのかが見えるようになった。会社においても同じ仕組みで個人のパフォーマンスを見える化すべきとの思想である。

 

従業員満足度調査
・前述のとおり、Salesforceでは従業員満足度調査を非常に重要視している。しかし、ありがちな人事部主導による従業員の満足度の改善には期待していない。なぜなら人事部には多くの場合、全社員に細やかなフォローができるほどのリソースがないからである。Salesforceでは、この満足度のデータを全社で公開(良いところも悪いところも)することで、部署間の優劣が明確にしている。これにより部下に選ばれるためにも各マネージャーには対策の義務が発生します。
・マネージャーについては彼らが負うべき仕事の内容、責任の範囲までもが全社員に公開されており、(V2MOM参照)各従業員がそれを閲覧することによって、上司を評価している。

 

3)Salesforceの採用戦略
①採用の50%がリファラル(社員紹介経由)の採用!
・採用の50%がリファラル採用である。驚きの結果だが、この仕組みが動くまでは非常に長い時間がかかっている。採用が成功するとわずかばかりの褒賞が出るが、成功のキーファクターはそこではない。リファラル採用が成功している本当の理由は96%の社員が会社自体に満足していること、つまりは人に薦めたい会社だからこそ紹介による採用ができていることである。
・また、Salesforceの採用がうまくいっている理由としては退職防止にも成功しているからである。過去5年間退職した社員は毎年7%ずつ減っている。単純に言えば昨年に比べて2,100人も退職者が少ないのだ。採用だけではなく退職防止が重要である。

【DAY3】

視察3日目以降のレポートは本視察参加者のみへの公開とさせていただいております。

 総括

グレートカンパニーに学ぶ“従業員が最高の力を発揮できる環境づくり”というテーマで、
今回訪問させていただいた企業で実践していた事例を3つに絞ってまとめさせていただきます。

☐オープンにする安心感(Salesforce)
・“Ohana”=社員は家族
→では家族とは何かというと、1番の拠りどころ
→何を言ったとしても、最後は分かり合える存在
・「過激な透明化」「360度評価」の前提
→「過激な透明化」:取締役会議のライブストリーミング(前提がなければただのデモンストレーション)
→「360度評価」:上司→部下だけでなく、部下→上司への評価に、本当に言いたいことが上がってくる

☐失敗のハードルを低める(SAP)
・挑戦し続けること=失敗し続けること:プロトタイプ文化 
→最も安い最も早く失敗できる方法がプロトタイプ
→これが一人一人の社員のマインドの中に深く刷り込まれている(だから瞬時に動ける)
・結果として失敗が最速で回りイノベーションが起こる
→mistakeを犯すこと:Invent(投資)、opportunityを逃すこと:Failure(失敗)
→失敗の連続が、イノベーションという果実として投資回収されることが成り立つ

☐徹底したセルフマネジメント(Zappos)
・コアバリューが完全に浸透し、個人と会社が一体化
→採用も評価もコアバリューに沿って行われ、自分の行動は、会社の皆がすると思うと自信を持てるレベル
→一人称の自分と会社が一体になっているので、行動の結果として返ってくるものは、自分に帰属するという意識
・だから、ホラクラシー経営が成り立つ
→上司も部下もない、誰の承認も必要としない、自分を自分で律するセルフマネジメント

ここでは、上記3つの事例をまとめさせていただきましたが、決して全部を全部自社に当てはめればいいというものではありません。
実際に上の3社がそれぞれの取り組みを実践できている(している)かといったら、そうではないことからもお分かりいただけるかと思います。

それでも、全社に共通するのは、
★ソフト(核となる考え方)→ハード(制度や設備)で環境をつくる
という点、「制度や設備」ありきではなく、まず「核となる考え方」を固めたうえで、そのためには何が必要なのかを考え取り組んでいくのが、“従業員が最高の力を発揮できる環境”をつくる上での大切なことではないかということでまとめさせていただきます。

この記事を書いたコンサルタント

星野佑介

2015年船井総研入社。入社後は、会計事務所のコンサルティングに従事する傍ら、豊富な海外経験をもとに海外視察セミナーにも積極的に参画し、2017年よりグレートカンパニー視察セミナーの運営を担当。2018年からはイノベーション推進室グローバルセクションにて、海外視察セミナーを企画運営している。

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